トシオ小父さんの伝道。
私が中学生のとき、田中芳樹『創竜伝』が、CLAMPの挿絵で文庫化された。
当時CLAMP『魔法騎士レイアース』や『X』『聖伝 RG VEDA』を読んでいた私はわりとジャケ買いで手に取り、読んだのである。
それをトシオ小父さんに話したところ、
「『創竜伝』?それはいけない、『タイタニア』も『アルスラーン戦記』もダメだ。読むなよ。読むなら『銀英伝』にしなさい。あと『創竜伝』は新書版がオススメだ、挿絵は天野喜孝だぞ」
と、『銀英伝』を全巻貸してくれた。
田中芳樹の超絶なる遅筆を知るのはそのすぐ後である。
結局、トシオ小父さんの伝道に従い、私は『銀英伝』と『創竜伝』以外には手をつけなかった(例外:『薬師寺涼子の怪奇事件簿』。これも挿絵が垣野内成美だから、というジャケ買いに近い)。
2020年、「『創竜伝』の最終巻が出る」とTwitterで知った私は、トシオ小父さんに即LINEした。
これは、その実際のやりとりである。
このとき彼は既に認知症を発症していたはずなのであるが、あとから振り返ると、妙な文言が含まれていない最後の会話だった。
『創竜伝』最終巻は、この3ヶ月後、2020年12月に刊行されている。
彼は読んだのだろうか。そして、どんな読後感をもったのだろうか。
たぶん、もう確かめる方法はない。