身内と私の話。

若年性認知症になった身内との記憶を綴るブログです。

トシオ小父さんと血管。

トシオ小父さんは、50代の初めに循環器系の急病でICU入りした経験がある。

 

この循環器系の病が、認知症の引き金になったのではと思うが、そこは素人考えなのでいったん措く。

 

その日は日曜日、翌日納品の案件の作業を急いでいた私に、他県の市民病院から電話があった。

 

「カトウトシオさんのご親族ですか?実は現在救急でカトウさんが入院しており、命に関わるので緊急手術が必要な状況です。ついては手術にご同意いただきたいのですが…」

 

待て。待て待て。意味がわからない。

 

確認すると、トシオ小父さんは身体の不調を感じて病院まで歩いて来院し、そのままICUに突っ込まれたのだという(オイ…)。

トシオ小父さんに緊急連絡先を聞いたら私だったとのことで、すぐにも来院して同意を、とのことだった。

 

…車で片道3時間ほどの位置である…。

 

「えーと、お伺いまで3時間ほどかかるのですが、間に合いますか?間に合わなければこのお電話で同意します」

 

「間に合うと思われますので急ぎご来院を」

 

「わかりました(さよなら納期と信用)」

 

というやりとりのあと、取るものもとりあえず(案件だけは引っつかんだ)、片道3時間ドライブ。

 

しかし親族の中でもいち世代若い私が決定権者になるのも憚られ、トシオ小父さんの同世代親族に連絡した結果、他に3人の親族が集合するハメに。

(あとで「なんで〇〇に言うんだよ!面倒なこと(=生活態度全般へのお説教)になるに決まってるだろ!」と苦情を頂戴した)

 

ともあれ、緊急手術は行われ、トシオ小父さんは一命を取り留めた。

(なお私は深夜帰り着いてから徹夜で案件を仕上げ、納期と信用を死守した)

 

緊急手術のあと、危険箇所が見つかり、再手術となったのだが、このときも私が付き添いとなった。

 

手術用の点滴を入れる段になって、やたらと看護師が出入りし、しまいに主治医が登場する有様になったので、何があったか聞いたところ、血管が皮膚面から見えにくく、点滴ルートが取れなくて5〜6回刺し直したのだそうだ。

 

「私血管透けてるから、採血とかで刺し直した経験ないなぁ」

 

と言ったところ、

 

「それは俺が生物としてお前より防御本能に優れているということだ。急所が見えないから攻撃できない」

 

となぜか誇らしげに自慢してきた。

 

…どういう負け惜しみだろう…。

 

病後、ダイエットをしたので、当時とは比べものにならないほど痩せているそうなのだが、トシオ小父さんの血管は、相変わらず見えにくいのだろうか。