身内と私の話。

若年性認知症になった身内との記憶を綴るブログです。

トシオ小父さんと差し歯。

トシオ小父さんは前歯2本が差し歯である。

 

私が物心ついた頃には差し歯になっていたので、20代で差し歯になったのだろう。

 

その理由が非常にマヌケである。

 

外資系企業に勤めていたトシオ小父さんは、当時たびたびアメリカ出張があった。

 

そこで名物の「ソフトシェルクラブのフライ」を食べることになった。

 

出てきた料理を見て、トシオ小父さんは、こんこん、とカニの殻をスプーンで叩いてみた。

 

硬い音がする。

 

「本当にソフトシェル?」

「ソフトシェルだ」

「本当だな?」

 

というやりとりの後…と書けばもうオチがわかると思うが、殻が硬すぎて、トシオ小父さんは前歯2本を失った。

 

子どもの頃は笑い話として聞いていたが…大人になってみると「バッカじゃないの?そう言われたからって無防備に全力で歯を立てるヤツがどこにいるよ!?硬いと思ったらそこで諦めろよ!」という気持ちである…。

 

食い意地の張った人だったので変な方向に頑張ったのだろう。

 

そんなわけで、小父さんの歯は今も差し歯である。