トシオ小父さんとブランドもの。
ひとつ思い出すともうひとつ思い出す。
思い出したときに書いておこう。
トシオ小父さんは、ある楽器が趣味で、セミプロ級だった。
一応、そういう音楽教室チェーンで、講師の資格をもっていたほどだ。
教室では、オケを組んで、海外に演奏旅行に行くことがあった。
トシオ小父さんが演奏旅行でイタリアに行くことになっていた折、親族が多く住む地方に仕事で立ち寄った。
そこで近々イタリアに行くと話し、「何か土産に買ってきてほしいものはあるか?」と聞くと、最年少の従妹が、「トシオ兄ちゃん、私、フェラガモの財布がほしい」と言った。
トシオ小父さんはフェラガモが何かを知らなかった。
「財布?そんなんでいいのか。じゃあ買ってくる」とイタリアへ旅立った。
そしてフェラガモの直営店で財布を買おうとして、その金額に驚愕することとなる。
帰国後、約束通り従妹に土産を渡したトシオ小父さんは、
「いいか。その財布の外身より、中身の金額は必ず多くなるようにしておけよ」
と捨て台詞を吐いた。
ちなみに私はワインを所望した。
現地のスーパーで買ったというそのワインを一緒に飲みながら、「あいつにしてやられた…」と嘆くトシオ小父さんに、「いや、まあ、流石にそれはフェラガモを知らない小父さんが変だと思う…」と私も冷たかった。
なお、トシオ小父さんは私に、見た目が多少エレガントなエコバッグも買ってきてくれたのだが、使いにくいので捨ててしまった。
トシオ小父さん、ごめんなさい。
でも私は消え物でよかったんだよ。
その従妹が外身より中身を多くするように心がけているかは、定かではない。