トシオ小父さんがとばっちりを受けた話。
トシオ小父さんが器楽を趣味にしていたことは書いたが、音楽教室というのはさまざまなコースがあるもので、イタリア歌曲に魅せられた彼は声楽を習い始めた。
なんだか面白そうなので、私も同じ先生に声楽を習うことにした。
その頃私はミュージカルファンで、週1でシアタークリエに通う(もちろん同じ演目)とか、そういうアホな行動をしていたので、私は主にミュージカル曲を習っていた。
そんな中、私は芸術系のことを職業にしたくなり、安定していた会社員業を辞めることにした。
それを伝えた母が激怒(泣いて怒った)したのはまた別の話なのだが、ここで思わぬことが起きた。
母がトシオ小父さんにクレームを入れたのだ。
「どうせアンタがあっちこっち連れ回してる間に変なこと吹き込んだんでしょう!」
…と、母に電話で怒鳴られたトシオ小父さんは、「いやー、なんのことかまっっったくわからなくて『……は?なんの話?』と返事しちゃったよー。ところでお前、会社辞めるの?ふーん、まあ、頑張って」という電話を私に寄越した。
寛大な人である。
そして言葉通り、「まあ、頑張って」以上の応援はしてくれなかった。
厳しい。
が、筋は通っている。
そのときも謝ったが、今さらながら、とんだとばっちりで、トシオ小父さんには申し訳なかったと思う。
ごめんよ、小父さん。