トシオ小父さんとPC。
トシオ小父さんはパソコン関係に強い人だった。
強い、というか、趣味だったんだろう。
2000年になるころには、既に自作PCを複数台持っていた。
その頃大学受験を控えていた私に、トシオ小父さんはこう言った。
「今どきPCがなきゃ大学生も大変だろう。第一志望に受かったら予算12万円で買ってやる。第一志望以外だったら、立て替えてやるから毎月1万円、1年で返せ」
そして私は第一志望に落ちた。
「よし、立て替えだな。秋葉原で選ぼう」
とほぼ強制的に連行され、まだまだ電気街だった秋葉原を連れ回され、中古で12万円のノートPCを買ってもらった。
忘れもしない。日立のフローラだった。
…使いにくかった…(ごめんよ小父さん)。
私はバイトを始め、コツコツ1万円ずつ返済した。
その後も小父さんはPC関係の新作には目がなく、Apple Watchも出たてで購入、iPadも複数持っていた。もちろん使いこなし、使い倒していた。
私から見ると、「ちょっと買いすぎ・持ちすぎじゃない?」と思うほど、新作が出るたびに買い、複数台所有していた。
時は流れ、トシオ小父さんは認知症を発症、施設に入所した。
先日、親族で連絡担当になっている母から連絡があった。
「トシオくんのiPad、『このiPadは使えません』と表示されてるんだけど、対処法知らない?」
パスコードの間違いすぎで、iPadがロックされたのだ。
持病の治療・管理入院前はスマホもタブレットも問題なく使えていたのに。
Touch IDも設定していたはずなのだが、何かでミスしたのだろう。
どうしようもない寂寞感と共に、対処法を伝え、「今後は、パスコードロックを解除した上で渡してあげてください」と母に返信した。
あのトシオ小父さんがなぁ。
わかってはいるのだが、とても寂しい。